万物が芽吹く「発陳(はっちん)」のとき
東洋の暦では、立春(2月4日頃)から、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨を経て、立夏(5月5日頃)の前日までを「春」と捉えます。 この3ヶ月間は、冬の間に閉じ込めていたエネルギーが外へと向かい、古いものを押し出して新しいものが生まれる、まさに『発陳(はっちん)』の季節です。
発陳(はっちん)とは?
「発」はひらく、「陳」はふるいという意味。冬に蓄えたエネルギーを解き放ち、体も心も外へと心機一転、のびやかに動き出すタイミングのことです。
春の養生ポイント:心と体を健やかに育むために
春の揺らぎやすい心身を整えるための、4つの大切な習慣です。
① 朝日を浴びて、意欲を育てる
春の朝は少し早めに起き、春の柔らかな朝日を体いっぱいに浴びて散歩しましょう。今は、自分の中にある「やる気」や「希望」を大切に育てるとき。新しい芽を慈しむように、自分の意欲をのびのびと伸ばしてあげましょう。
② 「奪わず、施す」心持ちで過ごす
春は生長の季節です。何事も押さえつけたり奪ったりするのではなく、生長に役立つものはすべて施し、生かしてあげることが大切です。他者に対しても自分に対しても、寛容でゆったりとした心で接しましょう。
③ 春の風(ふうじゃ)から身を守る
春の風は「風邪(ふうじゃ)」を運び、頭痛やくしゃみ、花粉症など、コロコロと症状が変わるトラブルを起こしやすいのが特徴です。 暖かくなったからといって急に薄着になるのは禁物。「春はゆっくり迎える」のが鉄則です。寒の戻りで血管が収縮し、巡りが阻害されないよう、首元や足元は温かく保ちましょう。
④ 「肝」を落ち着かせ、陽気を養う
春は五臓の「肝」が活発になりますが、ここは感情(怒りやストレス)の影響を受けやすい場所でもあります。イライラしたり、気が上がりすぎたりしないよう、深い呼吸で「肝」を落ち着かせ、内側の陽気を穏やかに養いましょう。
春の食養生:内側から「陽気」を助ける
春の体は、冬の「蓄えモード」から「発散モード」へと切り替わります。この時期の食事は、消化を助け、体に陽気を補うことがポイントです。
1. 「陽気」を補い、邪気を跳ね返す
春の風に乗ってやってくる「邪気(風邪など)」を防ぐために、抵抗力を高める食材を取り入れましょう。
- おすすめ食材:ネギ、ニラ、ニンニク、生姜など
- これら香りのある温熱性の食材は、体内の陽気を補い、巡りをスムーズにしてくれます。
2. 「酸」を控えめに、「甘」を多めに
春の味付けには少しコツがあります。
- 「酸(酸味)」は控えめに:酸っぱいものにはギュッと引き締める(収斂)作用があるため、春ののびのびとしたエネルギーの広がりを妨げてしまいます。
- 「甘(自然な甘み)」をプラス:ここでいう「甘」はお砂糖ではなく、穀類や芋類、かぼちゃなどの自然な甘みのこと。これらは「脾胃(ひい:消化吸収)」の働きを助け、元気を補ってくれます。
3. 春は「さっぱり」と新鮮な野菜を
冬の重い食事から、春は軽やかで新鮮な食事へとシフトしましょう。
旬の新鮮な野菜をたっぷり摂ることで、体にこもった熱を逃がし、内側からリフレッシュさせます。味付けは濃すぎず、素材の味を活かした「さっぱり」とした仕立てが春の体に優しく響きます。
【春のセルフワーク】体をゆるめ、気の巡りを整える
春の体は、まだ冬の「固さ」が残っています。いきなり激しく動くのではなく、まずは節々をゆるめ、滞ったものを流してあげましょう。
1. 太極拳の準備運動:スワイショウ(甩手)
「腕振り運動」とも呼ばれる、最もシンプルで効果的な養生法です。

- やり方:足を肩幅に開き、膝の力を抜いて立ちます。でんでん太鼓のようなイメージで、体を左右にねじり、腕を自然に体に巻き付かせます。
- 効果:背骨の緊張が解け、自律神経が調います。肩の力が抜けることで、春に上がりやすい「気」を下に降ろしてくれます。
2. ヨガ:三つの「首」をゆるめる身体ならし
東洋医学では、首、手首、足首の三つの「首」には気の通り道(経絡)が集中していると考えます。
- やり方:
- 足首:座って足を伸ばし、足首をゆっくりと大きく回します。
- 手首:指を組んで、柔らかく手首を回します。
- 首:呼吸に合わせて、前後左右に優しく倒し、最後にゆっくりと回します。
- 効果:関節の「詰まり」を取ることで、全身の血行とリンパの出入りがスムーズになります。
3. 胸を開くポーズ:エネルギーの解放
春の「発陳(はっちん)」を助けるために、縮こまった胸(肺のあたり)を大きく開きます。
- やり方:背中で指を組み、息を吸いながら肩甲骨を寄せて、胸を斜め上に突き上げます。
- 効果:呼吸が深くなり、体内に陽気を取り込みやすくなります。また、春特有のモヤモヤした気分をスッキリさせる効果もあります。
4. 呼吸法:春の「呼(こ)」
春は出す(デトックス)ことが先決です。
- やり方:鼻から吸って、口から「はぁ〜」と細く長く、体の中の古い空気をすべて出し切るイメージで吐きます。
- 効果:吐き切ることで、新鮮な春のエネルギー(清気)が自然と入ってくるようになります。











